

今回はKIS☆プロジェクトの第2弾コンテンツ「どっちかな?」ゲームと「どっちかな?2」ゲームの結果についてご報告します。今回の調査では、8000人を超える非常に多くのお子さんに参加していただきました。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました
▼「音」と「動き」の対応関係
「どっちかな?」ゲームと「どっちかな?2」ゲーム(図 1)では、子どもが特定の「音」から特定の「動き」を連想できるのかを調べています。関連研究として、カナダで行われたマウラーたちの実験を紹介しましょう。この実験では、2歳半の幼児に丸い形と尖った形の絵(図2)を見せながら、「“ブーバ”(または“キキ”)はどっちかな。」とたずね、どちらか選んでもらいました。その結果、多くの幼児が“ブーバ”の時には丸い形を、“キキ”の時には尖った形を選びました。まだ言葉の発達が十分でない子どもでも、一定の規則にしたがって「音(ことば)」と「形」を結びつけることができるのです。
今回の調査では、形ではなく「動き」と「音」の対応関係に注目しました。例えば「ぐるぐる」という音(擬音語・擬態語=オノマトペ)が、物が「回転する動き」を表していることを、子ども達はいつ頃から理解しているのでしょうか。また、その対応関係は生まれながらにして備わっている(=生得的)のでしょうか、それとも学習によって獲得される(=後天的)のでしょうか。
▼「どっちかな?」ゲームについて
今回のゲームはラオス語のオノマトペを用いた「どっちかな?」と、日本語のオノマトペを用いた「どっちかな?2」にわかれています。それぞれの言語のオノマトペと、それに対応した「動き」は6つずつ用意しました(図 3)。
ラオス語は多くの日本人の子どもにとって聞きなれない言葉です。もし「音」と「動き」の対応関係が生得的であれば、ラオス語のオノマトペに対してもラオス人と同様の「動き」を対応付けることができるかもしれません。もし後天的であれば、日本語の方が、そして年齢が上がるほど大人と同じ対応付けをするはずです。
▼結果発表!!
「どっちかな?」(ラオス語版)には5978人のお子さんが(図4)、「どっちかな?2」(日本語版)には2421人のお子さんが(図5)参加してくださいました。今回は統計分析に十分なデータが揃った1~6歳の結果をご報告します。

ラオス語版では「デッグザッ」、「ティウティウ」、「ヒィウ」、「トントントン」、「ドン」といったオノマトペに対して、本来それらが表す「動き」(=ラオス語としての正解)を統計学的に明らかに高い確率で選択していました(図6)。一部ではありますが、子ども達は聞いたことがない言語のオノマトペに対しても、それに対応する動きを識別することができるようです。

図 6. どっちかな?(ラオス語版)の調査結果
*は統計学的にその年齢層が正しい「動き」を選択したことを示しています。
日本語版では「ジグザグ」、「ぐるぐる」、「ふわふわ」、「ポンポンポン」といったオノマトペに対して、本来それらが表す「動き」をラオス語よりも明らかに高い確率で選んでいました(図7)。

図 7. どっちかな2?(日本語版)の調査結果
*は統計学的にその年齢層が正しい「動き」を選択したことを示しています。
▼考察
今回の結果から何が言えるでしょうか。ラオス語版でも特定の「音」と「動き」の対応関係が見られたこと、特に1歳児が3つのラオス語オノマトペに対して正しい動きを選択したことは、この対応関係が生得的である可能性を支持しています。しかし全年齢で大人と同等の対応関係が見られたのは「デッグザッ」のみであり、他は顕著な傾向が見られませんでした。もしかすると、生得的に備わっていた「音」と「動き」の対応関係が、成長するにつれて消えてしまうのかもしれません。
一方で、日本語版の方が明らかに高い確率で正しい動きと対応付けていたことや、年齢が上がるにつれてその傾向が強くなることから、「音」と「動き」の対応関係は学習によって獲得されるという解釈も可能です。両言語において1歳児が正しい動きを選択する傾向が強かったのは、それが生得的だからではなく、一緒にゲームを遊んだ大人の判断が影響しているのかもしれません。今回の結果のみからどの解釈が正しいのかを結論付けることはできません。今後さらに調査していきたいと思います。
解析:菊川道一(東京大学開研究室)、旦直子(帝京科学大学)
引用文献
Maurer, D., Pathman, T. & Mondloch, C. J., (2006). The shape of boubas: sound-shape correspondences in toddlers and adults. Developmental Science, 9, 316-322.



















